日本の水道水は世界トップクラスの綺麗さを誇っており、水道から汲んだ水をそのままの状態で飲める国自体が世界の中でもかなり希少だと言われています。

水道水をそのまま飲むとお腹を下すという国もあれば、水道自体が普及していないために川や井戸で汲み上げた水を飲んでいるという国も実際にあります。

そう聞くと日本の浄水レベルがかなりのものであることは何となく想像できますが、実際に自然の水を水道水として供給している浄水場の仕組みについて、社会人であってもそれほど知識がないという方も多いはずです。

そこで今回の記事では、日本の水を支える浄水場の仕組みについて解説します。日本の水道水が綺麗で直接飲めるということは頭で分かっていても、そのまま飲むことに抵抗を覚える方も少なくありません。

いくら浄水場で綺麗にしていてもその名残である「カルキ臭さ」が抜けきらないために、水道から直接汲んだ水は飲みたくないという方も多いのではないでしょうか。

しかし近年では浄水場の技術は以前よりもさらに向上しており、「高度浄水処理」という処理を施してから水道水を供給するようになっています。
世界的に食料問題に注目が集まる時代だからこそ、日本の水事情についても知識を深める必要があります。

 


 

第一章:そもそも浄水場は何をするところ?

この章ではまず浄水場の仕組みについて解説していく前に、浄水場が何のために存在するのかについておさらいしておきましょう。

1・水の安全性を確保する

1・水の安全性を確保する

そもそも水とは私たちの生活に欠かせないものであり、普段生活するだけでもかなりの量の水を使用しています。
水道かれ供給される水は飲むだけでなく、洗濯やお風呂、料理などにも活用されます。
この水道水に何らかの病原菌や有害物質が含まれていれば、日本全体として病気が蔓延することにもなりかねません。
国民という消費者に対して、水の安全性を確保することが浄水場の最も重大な使命と言えるでしょう。

2・有害物質を取り除く

2・有害物質を取り除く

前項でも触れたように、水の安全性を確保するためには水はまず無害なものでなければなりません。
そのため水に含まれているであろうヒ素やカドミウムのような人体に有害な成分、大腸菌のような病原性のある細菌、農薬や塩素のような身体に不要な物質はある程度取り除く必要があります。

ただし全てを取り除くというのはいささか難しいこともあり、浄水場では上記のような有害物質が基準値を超えていないかどうかを監視する役割も担っています。
人体に害のないレベルであれば少量程度は含まれていても問題ありませんので、浄水場ではその基準値をきちんと下回るように水の濾過や消毒を行なっています。

3・水を美味しく飲める物にする

3・水を美味しく飲める物にする

基準値を全て下回る状態の水質であっても、水が美味しいかどうかというとまた話は別です。
水道水の安全性を確保するのと水の味とはまた違う問題ですので、かつては基準値を下回っていれば多少カルキ臭い水であっても問題視されずに供給されていました。

しかし現在の浄水場では当たり前に高度浄水処理を行なうようになり、水道水の味についてもより美味しい物にできるように努力しています。

浄水場がどのような役割を担うために存在するかを確認したところで、次章では本題である浄水場の仕組みについて解説していきます。

第ニ章:浄水場の仕組み!

第ニ章:浄水場の仕組み!

日本の水道水が世界トップクラスの綺麗さを誇るということはすなわち、日本の浄水場の技術力そのものが世界トップクラスということに他なりません。

しかし現代を生きる私たちは水道水が綺麗であることを当たり前のように思い込み、その綺麗な水道水を作り上げるためにどれだけの人々が影で努力していることを殆どの人が知りません。

人間の体は半分以上が水分でできています。飲食店の不祥事がニュースで取り沙汰される度に食の安全性を疑い、消費者として知識をつけるのに水の安全性については頓着しないのはおかしな話です。
インターネットが普及して様々な知識を学べる環境になった今だからこそ、水道水の品質を保証してくれる浄水場の仕組みについてもきちんと知っておく必要があります。

以下では各項目に分けて浄水場の仕組みを紹介していきますので、順を追って水が綺麗になる過程について勉強していきましょう。

1・着水井(ちゃくすいせい)

1・着水井(ちゃくすいせい)

水道水として家庭に供給されるまでの水のことを「原水」と呼びますが、この原水が浄水場の中で一番最初に流れ込むのがこの着水井という部分になります。

この着水井では原水の量を調節しているのですが、ダムに代表されるような水源から浄水場へと水を取り入れる前の準備段階として『沈砂池(ちんさち)』という場所にて、まずは土や砂利といった細かな異物を底に沈めることで取り除いています。
水源から流入したこれらの異物をある程度取り除いた時点で、導水管を通じて着水井へと原水が運び込まれてきます。

2・沈殿池(ちんでんち)

2・沈殿池(ちんでんち)

しかし、着水井の時点でもまだ取り除ききれていない土や砂利がありますので、さらに細かな異物を取り除くために存在するのがこの『沈殿池(ちんでんち)』です。

ここでは凝集剤と呼ばれるポリ塩化アルミニウムを原水に注入することで、水中に浮かんだ異物が大きな塊として凝集することで底に沈殿していきます。
この過程を経ることで原水から異物が次々と取り除かれていくのです。

3・急速濾過池(きゅうそくろかち)

3・急速濾過池(きゅうそくろかち)

凝集剤によって異物を取り除いた後でさえ、凝集しきれなかった微小な異物というのは水中に浮かんでいるものです。

そのため沈殿池から運ばれた原水は次に『急速濾過池(きゅうそくろかち)』を通過します。
この急速濾過池とは名前の通り原水を濾過する役割を担っており、砂と砂利の二層を順々に通過させることで目には見えない大きさの異物まで取り除くことができます。

4・消毒設備

4・消毒設備

急速濾過池で異物を取り除かれた原水は、次に消毒設備へと運び込まれます。
この消毒設備では次亜塩素酸ナトリウムを加えるのですが、これにより水をひとまず飲める状態にまで消毒することができます。

ただしこのままではカルキ臭さが残ってしまいますので、総仕上げとして高度浄水処理という方法が導入されるようになりました。
この方法については以下で詳述しますのでここでは省略します。

5・配水池

5・配水池

水の安全性を確保できた時点で、家庭へと供給するまでの間はこの配水池にて保管されます。
この配水池は倉庫的な役割を担っている一方で、水の消費量に応じて水量を調節する役割も同時に担っています。
また浄水処理というのもすぐに完結できるものではありませんので、配水池では平時用だけでなく災害時用にも水を保管するという重要な役割があります。
日本の水道水が枯渇しないのも、こうした節約兼貯水機能があるからなのです

6・高度浄水処理

6・高度浄水処理

以前から存在する浄水処理だけでも安全性の高い水道水は供給できていたのですが、季節や水源の状態によっては原水の消毒をかなりきつくしなければならず、結果としてカルキ臭さの残る水道水が供給されることもしばしばありました。

そこで水の安全性だけでなく味まで追求するために開発されたのが、この高度浄水処理という処理方法なのです。

ここで使用するのは主に二種類の物質のみで、それがオゾンと活性炭です。
手始めにオゾン処理をすることで水道水の中に混じった有機物や臭い物質を分解し、次に活性炭を投入することで水中に残った微量な物質までをも取り除くことができます。
この処理方法を活用することにより、日本の水道水は安全性だけでなく味にまでこだわった品質の物が供給されています。

7・給水方式の種類

7・給水方式の種類

配水池に貯水されている水は時期を見て家庭へと供給されていくのですが、ポンプによる水圧のかけ方で給水方式が二種類に分類できます。

まず一方は「直接給水方式」と呼ばれるもので、給水管の途中に増圧用ポンプを設置することで水圧を強めながら、ビルやマンションのような高層階にも直接水道水を供給するという方式です。

もう一方は「貯水槽水道方式」と呼ばれるもので、受水槽に一度貯めた水をポンプを駆使しながら屋上階に設置されている高置水槽まで運び込み、各家庭には自然落下を利用する形で供給するという方式です。

どちらの給水方式に該当するかは普段利用している建物の構造次第と言う他ありませんが、どちらがより優れているというものでもありません。給水方式にも微妙な違いがあることを大まかに知っておくくらいで十分です。

第三章:ミネラルウォーターと味が違うのは何故?

第三章:ミネラルウォーターと味が違うのは何故?

水道水との比較対象として挙げられやすいミネラルウォーターですが、皆さんは水道水とミネラルウォーターとの違いについてご存知でしょうか。

ここまでは水道水の安全性が高いことを述べてきましたが、日本の中には依然として水道管の老朽化や地域性により水道水の味が美味しくないという地域もそれなりに点在しています。
そういった地域で美味しい水を飲みたい場合にはミネラルウォーターを購入している方も多いでしょうから、この記事の締めくくりとしてそれぞれの味の違いについて解説してみましょう。

1・水の美味しさはミネラルで決まる

1・水の美味しさはミネラルで決まる

水道水とミネラルウォーターとは同じ水ではあるものの、厳密に言えばミネラルウォーターはミネラルウォーター属という区分になります。
細かく分けるといくつかの種類に分類できるのですが、大まかな味の違いについて述べることを優先してここでは省略しておきます。

そもそも水に含まれるミネラルとは健康を維持する上でも必要とされる成分であり、具体的には以下のようになります。

 

・カルシウム

    骨や歯を形作る主成分であり、カルシウムが不足するだけでも骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や虫歯になりやすくなります。

・マグネシウム

    骨を構成する成分といえばカルシウムのイメージが強いですが、マグネシウムもまた骨を構成する成分の一つとして含まれます。
    これが不足しがちだと生活習慣病になるリスクが高くなることが特徴的で、またマグネシウムには血圧を維持したり神経の興奮を抑制してくれる働きがあります。

・ナトリウム

    塩分の多い食材ほど多く含まれるナトリウムは、過剰摂取してしまうと高血圧を引き起こすことで知られています。
    ただし不足するのも問題で、筋肉や神経系統に悪影響を及ぼすとされています。ただし水に含まれるのはごくわずかな量でしかありませんので、水をたくさん飲んだからといってナトリウムを過剰摂取してしまうことはほぼないと考えていいでしょう。

・カリウム

    ナトリウムと対をなして体の細胞を構成しているカリウムは、体内にある無数の細胞の状態を整えるだけでなく血圧の維持にも一役買っています。
    そのためカリウムが不足すると女性が悩みやすいむくみが出やすくなり、ひいては高血圧にまで発展することもないとは言いきれません。

・サルフェート

    温泉によく含まれる成分で、利尿作用があり便秘にも一定の効果があると言われています。

・バナジウム

    近年になって注目を集めているミネラルの一種であり、その効能については研究段階にあります。

これらのミネラルの含有量によっても感じる味が異なっており、水道水も含めて日本の水に関してはミネラルの含有量が少ない軟水であることがほとんどです。

そのため国内産のミネラルウォーターや水道水を口にすると、口当たりが柔らかく飲みやすいように感じる方もいるはずです。

その一方で海外のミネラルウォーターは硬水である場合が多く、口当たりに癖があり独特の匂いや味を感じやすくなります。
日本人は軟水を日常的に飲んでいるため硬水に苦手意識を覚える方も多くいますが、ミネラルが豊富に含まれる硬水の方が健康に良いという研究もあります。

日本人が好むミネラルウォーターは正式にはナチュラルミネラルウォーターと呼ばれており、加熱殺菌が施されていることが通例です。
そのため塩素が残留することによるカルキ臭さを感じることは一切ありません。

2・水道管の状態でも味が変わる

2・水道管の状態でも味が変わる

水道水の味が美味しくないと水道水の品質が悪いせいだと思われがちですが、以下のような味や臭いがする場合には水道管のせいである可能性が高くなります。

 

・シンナー臭い

    新築の住居に住み始めて間もなく感じることが多いのですが、半年もすれば時間の経過とともに徐々に臭いや味はしなくなります。

・鉄錆臭い

    水道管の内部が錆びているとその錆が水道水に溶け出し、錆臭さや苦味を覚えることがあります。
    この場合には水道管の老朽化が関連してきますので、最寄りの水道局に連絡しましょう。

水道水を供給する水道管自体に問題がある以外にも、季節的な要因や自然災害の影響により水道水の水質が変化することがしばしばあります。水道水の味が変わり飲んで大丈夫かどうか判断に困ったら、水道局の公式HPを確認したり直接相談してみることをおすすめします。

第四章:まとめ

第四章:まとめ

浄水場の水を一日に何度も検査することができない代わりに、浄水場ではその水で金魚を飼って水の安全性を確かめています。
こう書くと動物実験をイメージして批判の声も上がりそうなものですが、金魚が安全に暮らせる水を作るためにも浄水場で働く人々は日夜その技術を駆使しているのです。

私たちが安全に水道水を使用できている影には、たくさんの人々の努力が潜んでいます。水もまた有限の資源であることを改めて自覚し、日頃から節水する意識を持って大切に使用することを忘れてはなりません。