はじめに

公共下水や合併浄化槽の普及といった背景から、近年では汲み取り式トイレが残る地域というのも非常に少なくなっています。しかし今なお汲み取り式トイレをそのままにしている家庭もあり、このトイレの構造や問題点により生じるトラブルというのも少なからず存在します。下水道が整備された地域であれば水洗トイレへと造り替えてもらうこともできますが、そもそも下水道が整備されていない山奥や地方住宅では下水道を整備しなければならず、莫大な工事費用がかかることもしばしばあります。そうした地域に住んでいる方は汲み取り式トイレと上手く付き合っていかなければならないのですが、現存数が少ないためにトラブルの対処法を紹介しているサイトが少ないことは相当な痛手と言えるでしょう。

そこで今回の記事では、汲み取り式トイレで起こりうるトラブルに着目して、各トラブルの対処法について紹介します。対処法を知るだけでなく汲み取り式トイレの構造を併せて知ることで、そのトラブルが発生することを未然に防げるのです。この記事の内容が、現在進行形で汲み取り式トイレのトラブルに悩む方の力になれれば幸いです。

 

 

 

1章:汲み取り式トイレで起こりうるトラブル

この章では汲み取り式トイレで起こりうるトラブルの概要について解説します。それとともに何故そのトラブルが起こりうるのかを深く掘り下げるためにも、今回は汲み取り式トイレの構造についても詳しく紹介しておきます。

 

 

1-1:汲み取り式トイレとは

そもそも汲み取り式トイレとは昔から存在する落下式トイレの一種なのですが、擬音語を用いて「ボットントイレ」「ドボントイレ」などと呼び表されます。この落下式トイレには他にも垂れ流し式トイレやトンネル式トイレといったものがあります。

 

・垂れ流し式トイレ

排泄物が未処理のまま、川や海へと流されるタイプのトイレの種類を指す。

 

・トンネル式トイレ

便器の半分に穴が空いており、その穴から落ちた排泄物が横向きの管を通過してから、下水道や浄水槽へと流れ込むタイプのトイレの種類を指す。

 

これらのトイレは根本的には汲み取り式トイレとは異なり、排泄物を汲み取る必要性が一切ありません。現在では減少しつつありますので、今回はいったん省略しておきます。排泄物がそこに留まることにより様々なトラブルが絶えない汲み取り式トイレですが、その構造とはどのようになっているのでしょうか。

 

 

1-2:汲み取り式トイレの構造とは

汲み取り式トイレの具体的な構造については、以下のようになります。

 

・大便器

便器の半分に穴が空いた「半穴」と便器の底部分全体が空いている「全穴」とがあり、そこから落ちた排泄物が便槽へと貯蔵されるのが汲み取り式トイレ最大の特徴となります。和式便器が主な形状ですが洋式便器や、和式便器の上から洋式便器をそのままかぶせた簡易洋式トイレの形状をとっている家庭もあります。

 

・小便器

主な形状として陶器製の朝顔型が普及していますが、これ以外であれば陶器製もしくはプラスチック製のストール式小便器も一部では存在しています。

 

・臭突(しゅうとつ)

旧式の汲み取り式トイレでは、排泄物の臭いを屋外へと排気するための臭突が存在します。ただ簡易式水洗トイレの場合にはこの臭突が存在しないこともあります。臭突の先端部分には雨除けとして傘が付属されていますが、そこに風力式もしくは電動式ファンを設置している場合がほとんどです。

 

・スパッター

便器と排泄物が落下する直下管とを繋ぐための短い管のことを指し、便器の穴から直下管の直径まで穴のサイズを小さくすることに役立っています。これが存在することにより、赤ちゃんや小さい子供の便槽への転落を防ぐことができます。

 

基本的に汲み取り式トイレとは直下式トイレの構造をとることがほとんどですが、中には以下のようなトイレが見られることがあります。

 

・内務省式改良トイレ

排泄物を堆肥として使用しやすいよう考案されたトイレで、第1槽から第5槽までの便槽が存在するタイプです。1ヶ月以上便槽内で排泄物を腐敗化させるため、大便器に蓋をできるよう設計されています。

 

・厚生省式改良トイレ

排泄物を3ヶ月以上貯蔵できるように設計されたトイレのことを指し、寄生虫の卵や法定伝染病の類を死滅させてかつ悪臭に関するトラブルを軽減する目的で厚生省から考案されたタイプです。直下管への悪臭の逆流を防ぐための第1貯留槽、堰を設けた第2槽とで順々に排泄物を腐敗させることができます。戦後において最も普及した汲み取り式トイレと言われています。

 

・無臭トイレ

便器と便槽までの間に「トラップ」と呼ばれるU字管を設けたタイプのことを指し、便器の真下で臭突へと分岐する管が分岐するよう設計されており、の構造によりその他の汲み取り式トイレよりも悪臭を低減させることができます。ただしトラップ内に排泄物が溜まりすぎると詰まる原因になりますので、大便器から水を定期的に流す手間が増えるとともに、バキュームカーでの汲み取り量が多くなることがデメリットとして挙げられます。

 

このように多様なタイプの汲み取り式トイレがあるのですが、基本的に汲み取り口から排泄物を汲み取ることは何ら変わりありません。ただ汲み取り口を塞ぐための蓋が微妙に変形していると、その隙間から冷風が入り込むことでも別のトラブルに発展する場合があります。

 

 

1-3:汲み取り式トイレのトラブルとは

汲み取り式トイレで起こりうるトラブルとは、汲み取り式トラブルの問題点により発生しうるものと考えることができます。そのため具体的な内容としては、以下のようなものが考えられます。

 

・悪臭がトイレ室内まで逆流する

改良トイレであれば悪臭がないこともありますが、改良前のトイレであれば直下管から便器の方向へと悪臭が逆流するトラブルが発生することが考えられます。

 

・害虫が発生する

汲み取り式トイレでは排泄物を貯蔵する構造であるために、そこからハエやウジ虫が繁殖する可能性もないとは言い切れません。

 

・自然災害の影響で排泄物が流出する

台風や河川の氾濫といった自然災害が発生した際に家屋まで浸水してしまうと、便槽にまで大量の水が流入してしまいます。その結果として便槽内に貯蔵されていた排泄物が流出して、屋内や付近の住宅まで汚染されることが過去の事例として記録に残っています。そうなれば二次災害として、汚染された水を媒介にして病気が流行することにもなりかねません。

 

・小さい子供や物が便槽へと落下する

汲み取り式のトラブルとして非常に厄介なものが、小さい子供や物が便槽へと落下してしまうものとなります。便槽に物が落ちてしまうと便槽内の排泄物の中から取り出すことになり、サイズが小さいほど見つけることは非常に困難であると言うほかありません。

あるいは便器の穴に小さい子供が引っかかったり、そこから便槽へと転落することも起こりうるかもしれません。こうなってしまうと便槽に通じる直下管や便槽本体を破壊しなければならず、莫大な費用と時間とを要することになります。過去に乳幼児が便槽へと転落した事故では、救出が間に合わず衰弱したり窒息することで死亡するという最悪の事態にも発展しています。

 

・トイレが詰まる

直下型の汲み取り式トイレであれば特に問題ありませんが、トラップの設置されているトイレの場合ではその部分から詰まることもしばしばあります。このトラブルについては比較的簡単に解消することができます。

汲み取り式トイレのトラブルとしては主に上記のようなものがあることを把握したところで、次章では汲み取り式トイレのトラブルに関する対処法について見ていきましょう。

 

 

2章:汲み取り式トイレで起こるトラブルの対処法

この章では実際に起こってしまったトラブルに関する対処法について解説します。汲み取り式トイレでは水洗式トイレとはまた別種のトラブルが起こりうるものですが、具体的な内容については以下のようになります。

 

 

2-1:バクテリア入り消臭剤を使用する

排泄物から悪臭が放たれるそもそもの原因が有機物ゆえなのですが、バクテリア入り消臭剤を使用すれば水と二酸化炭素になるまで排泄物を分解してくれます。またバクテリア入り消臭剤を使用することで、便槽内の排泄物が乾燥するまでその効果を持続的に発揮することができます。

市販されている物の種類にもよりますが、大便器の穴に向かってスプレーボトルで噴霧するタイプや、便槽まで液体を直接流し込むタイプのものまで存在します。

 

 

2-2:常に換気する

汲み取り式トイレの中には大便器に蓋をできるタイプのものもありますが、蓋をしたままにしていると開けた瞬間に悪臭が逆流することもあります。汲み取り式トイレの悪臭に関する対処法としては、あえて大便器の蓋を開けた状態で小窓を開けたり臭突を稼働させて、常に換気しておく方法があります。こうすることでトイレ室内の空気が常に循環しますので、悪臭が直下管内と大便器との間にこもりにくく、たとえ悪臭が逆流した場合にもトイレ室内の悪臭がすぐに軽減しやすくなります。

 

 

2-3:トイレ室内に物を置かない

近頃ではDIYが流行っていますので、トイレ室内をインテリアや小物で飾り立てたいと思う方も中にはいるかもしれません。しかしトイレ室内に不要な物を置いてしまうと、汲み取り式トイレの穴へと物が落下する可能性が高くなります。特にトイレ室内に布製の物を置いてしまうと、それだけ悪臭が染み付きやすく結果的に悪臭がトイレ室内にこもり続ける原因にもなりかねません。

汲み取り式トイレの場合には、特に便槽内に誤って落下させてしまった小物を見つけることはほぼ不可能です。落下を防止したいのであれば、悪臭対策も兼ねて最初からトイレ室内に余分な物を置かない方がよほど賢明かもしれません。

 

 

2-4:なるべくこまめに汲み取りしてもらう

便槽内の排泄物が多量に溜まってしまうとそれだけで悪臭が酷くなり、万が一の自然災害時に便槽に大量の水をが流入すれば汚水として周囲を汚染してしまうことももちろんあります。汲み取りは1回36ℓ程度までと量が決まっており、お金も支払わなければなりません。そのため家族が多い家庭ではなるべくこまめな汲み取りしてもらう方が、排泄物がそもそも家庭からなくなりますので悪臭に悩まされる心配もありません。

特に簡易水洗トイレでは詰まり予防として水を流しますので、通常の汲み取り式トイレよりも便槽内の排泄物がそれだけカサ増しされることになります。排泄物が多いということはそれだけ悪臭や害虫が発生しやすくなります。

 

ただバキュームカーでの汲み取りはある程度の周回頻度しかないため、なるべくこまめに汲み取ってもらうというのに限度があります。対処法としてはイマイチですが、その場しのぎ程度には使える方法でしょう。

 

 

2-5:簡易式水洗トイレに造り替える

水洗トイレに造り替えられない場合でも、簡易式水洗トイレに造り替えることで現在悩んでいるトラブルを緩和することができるかもしれません。少量の水を使用して大便器内を洗い流せますので悪臭が改善されやすいですし、独特の構造をしているためハエのような害虫の侵入も防ぐことができます。下水道が整備されていない地域でもできる最善の対策ではあるものの、あくまでも汲み取り式トイレの域は出ません。下水道が整備された時には水洗トイレへと完全に造り替えた方が、より快適に使用できるようになります。

 

 

2ー6:水を流す

簡易式水洗トイレではない場合でも、詰まった場合には水を流すことで詰まりが解消されることもあります。ただし水を流してみてもまだ詰まりが解消されない場合には、素人では直せない原因で詰まっていることも考えられます。その場合にはプロの業者に相談した方がいいかもしれません。

 

 

 

まとめ

汲み取り式トイレは排泄物が下水道に流せないからこそトラブルが起こりやすいですが、使い方次第では悪臭が逆流しない状態で清潔に使うこともできます。今回紹介した対処法は基本的に、トラブルを予防することに重点を置いています。

そのため現時点ではトラブルが起こっていない方でも、日常的に取り組むことでトイレを快適な状態で維持できます。今まで対策をしてこなかった方でも、これを機に取り組んでみてはいかがでしょうか。